2017/06/11

「たとえ世界が終わっても」 橋本治

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タイトルの「世界」は資本主義やグローバリズムのこと。なぜそういうものが終わるのかについて、ヨーロッパと日本の近代史をザックリと語っている。なかなか面白かった。

橋本治は「貿易なんて西洋人の陰謀」と言っている。日本の近代は、大砲の付いた船でやってきた西洋人に「俺のとこの商品を買え」と脅され、近代化しないと欧米に侵略されてしまうというところから始まった。そのとおりだと思う。

資本主義やグローバリズムは飽和によって終わる。そういう世界が終わるのは、陰謀の終焉でもあるから、良いことなんじゃないだろうか。

その後にくるのは、あまり儲からない、トントンで回る経済だ。

2017/05/22

「想定外を楽しむ方法」 越前屋俵太

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30年くらい前にテレビの深夜番組で見た、通行人にシャンプーしてしまう俵太は本当に面白かった。ナイトスクープの探偵となり、「巨泉の使えない英語」でアメリカ街頭ロケに行ったり、「ふしぎ発見」のミステリーハンターになったりと活躍していたが、その後、書家俵越山になってからはあまり見かけなくなった。

最近、越前屋俵太としての活動を再開し、この自伝的な本を出したようだ。俵太氏は想定外こそが面白いのだと主張し、実践し続けているわけだが、予め考えたとおりの結果を得るために、仕込みやヤラセで済まそうとするテレビ業界人たちとの闘いが書かれていて、なかなか興味深い。

想定外じゃないと面白くないというのは、「面白さは発見であり、面白いことは予想がつかない」という僕の意見と全く同じだ。

2017/03/16

「In My Element」 ロバート・グラスパー



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ヒップホップの要素を取り入れて新しいジャズを生み出しているロバート・グラスパー。ピアノ・トリオでさらさらと耳になじむメロディーを演奏しているので聴きやすいが、よく聴くといろいろ新鮮なことをやっている。特に、スピード感のあるリズムの展開と、左右それぞれの手が弾くフレーズの絡み合いが印象に残る。

かなりアクロバティックなこともやっているわりに、無機的なテクニック志向にならず音楽的な美しさも保っていて素晴らしい。アルバム全体の雰囲気として、静かでゆったりした感じと、細かい符割による疾走感が両立しているところがカッコイイ。かなり気に入りました。

2017/02/27

「騎士団長殺し」 村上春樹


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作者の過去の長編小説を全部混ぜて1つの形にまとめたような作品。特に、奥さんと別れてまた戻るまでの主人公の内面的な試練というストーリーの骨格は「ねじまき鳥」で、作品中に登場する絵の題名が小説の題名でもあること、妖精みたいな存在(騎士団長=カーネル・サンダース)が登場すること、誰かと誰かの親子関係の有無が重大問題で、その真偽が未確定なことなどは「カフカ」。


僕にとって、村上作品の最大の謎は、この妖精みたいなものが何を意味しているかだ。過去の期間限定サイトなどで作者は、それが物語の中にだけ存在するものではなく、我々の意識のありようによっては現実に存在を感じられるものだというような説明をしていたと思う。

「騎士団長殺し」を読みながらそのことについて考えていると、騎士団長がイデアの説明をするために左右の脳のことを言い出したので、村上春樹の愛読書「神々の沈黙」(ジュリアン・ジェインズ)が思い浮かんだ。→ 以前書いた感想はこちら


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村上作品に出てくる妖精みたいな存在は、主人公を問題解決に導くわけだから、「神々の沈黙」でいうところの右脳が発する神の声に相当するのではなかろうか。村上春樹は、神とは言わないまでも、困ったときにヒントをくれる妖精ぐらいなら我々の内側にいるということと、その声を聴くための意識のあり方はどんなものなのかを物語として表現しているような気がする。


この小説には、妖精的存在とは別の非現実的なものとして、生き霊も登場する。それについて思い浮かぶのは「雨月物語」(上田秋成)。これは江戸時代に書かれた怪談話で、村上春樹がインタビューなどで好きな物語としてたびたび挙げているもの。「騎士団長殺し」に登場する老いた画家の名字の雨田は雨月物語から来ているのではないか。


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2017/02/16

音の良いCDアルバム


音が良いCD、昔でいうとレコード。今ならデータ配信もあって、「録音された音楽作品」のことをまとめて何と呼べばいいのか判りませんが、とにかく良い音で録音された音楽について。

音が良いというのを物理的に考えると、高い音から低い音までちゃんと録音できているとか、小さい音も大きい音もしっかり聴こえるということに尽きそうです。それなら、音の良さは機材の性能や音量バランスの調整といった録音技術の問題だけで決まるのかといったら、そうじゃないですね。

肝心の音楽がつまらなかったら、録音技術の良さも伝わらない。音の良し悪しには、ミュージシャンが楽器を良い音で鳴らしているとか、声が良いとか、それを活かせるだけの曲やアレンジの良さというコンテンツの質も関わってきます。音楽の表現の幅広さがあってこそ、録音技術も発揮される。音の良いレコードというのは、優れた録音技術と音楽としての素晴らしさを兼ね備えた作品なわけです。つまり、音の良さには演奏や曲の良さ、音楽としての良さが含まれている。写真でいうと、解像力や色の再現性はカメラの性能ですが、構図やシャッターチャンスというのは撮影者の腕前によるもので、両方が揃って良い写真になるわけです。

録音技術者はマイクを適切な位置にセットし、音量バランスやステレオ定位を調整し、エコーなどのエフェクトを掛けることによってサウンドを作ります。レコードの録音現場で生の音を聴いたとしても、レコードと同じ音が聴こえるわけではありませんね。良い録音とは、現場の演奏をそのまま再現しているのではなく、ミュージシャンと録音技術者が協力して架空の音世界を作っていて、その世界が素晴らしいということです。

1枚のアルバムの中にはいろいろな雰囲気の曲が入っているのに、全体としてのまとまりがあるのは、録音エンジニアの手によってサウンドが統一されているからです。曲が多様なのにサウンドによって一体化しているというのが、良いアルバムの条件だと思います。

さて、そういう音の良いレコードやCDの値打ちは、再生装置が良くないと判らない部分もあるわけですけど、最近は安いオーディオでもすごく良い音になってきて、気軽に音の良さを楽しめるようになりました。僕がびっくりしたのはJBLのPebblesというPC用のスピーカーで、こいつは6000円もしないし小さいくせにすごく良い音がします。さすがに低音の迫力はありませんが、小さい音で聴くには充分。音がとてもクリアでサウンドの奥行きが感じられるので、今までに聴き尽くしたような曲でも「こんな音も入っていたのか、こういう空間配置のサウンドだったのか」という発見があって楽しめます。

そういうわけで、これからしばらくサウンド指向で音楽を聴いてみようと思い、手持ちのCDを聴き直して、音の良いCDのリストを作りました。もちろん、内容も素晴らしいものばかりです。今まであまり気に入らなかったアルバムでも、サウンドに集中して聴いていると、音楽的な内容の良さに気付いたりもします。面白いのは、録音機材の性能が貧弱なはずの半世紀以上前のジャズのアルバムの中に、なぜか今の高音質録音より「音がいいなあ」と思えるものがあることですね。

以下、アルバム発表年順のリストです。'60年代まではジャズばっかりですが、'70年代以降、ジャズの衰退とともにジャズ・ミュージシャンがセッション・ミュージシャンとなってポップのレコード製作に参加するようになり、スティーリー・ダンのような音の良いポップのレコードが生まれてくるわけですね。

(2017.2.16更新「That's Why God Made the Radio」ビーチボーイズ) 

「Chet Baker Sings」
チェット・ベイカー
 1956


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ジャズ・ヴォーカルの名盤だけど、歌っているのはトランペッター。スタンダード曲をとても素直な歌い方で全く声を張らずに歌っていて、すごくリラックスして聴けます。

録音はモノラルで、決して「高音質」とはいえないのだけど、なぜか良い音だと感じます。当時の機材はキレイに録音できる音の大小や高低の範囲が狭そうですが、静かな歌い方と音数の少ない伴奏で、機材の性能を精一杯活かしています。

また、そういうシンプルな歌と演奏によって曲の良さもよく判ります。名演として有名なのは「MY Funny Valentine」。僕が一番気に入ったのは「But Not For Me」、ガーシュインの曲。「That Old Feeling」も軽快で良いです。

リンク先のジャケット画像はオリジナルの赤黄緑の三色デザインと違いますが、こっちの方が良いですね。ところで、ギターを後から追加したステレオ・バージョンというのもありますが、ヴォーカルにエコーが掛かっていてダメです。モノラル盤をお薦めします。


「Art Pepper Meets The Rhythm Section」
アート・ペッパー
 1957


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ステレオ録音のレコードが最初に発売された年の作品なのに、ジャズで音の良いレコードとして一番有名なんじゃないでしょうか。「西海岸にやってきたマイルズ・デイヴィスのバンドのメンバーがアート・ペッパーと共演した」という意味のタイトル。その名のとおり、さすがに安定感のあるバンドをバックにアート・ペッパーもいい調子で吹いてます。左にペッパーのアルト・サックス、右に他の3人という定位で、やや偏った感じではありますが、とにかく音質が自然です。録音エンジニアはロイ・デュナン。

「Thelonious Monk Quartet with John Coltrane at Carnegie Hall」
セロニアス・モンク
 1957(録音年)


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2005年に発売のアルバムですが、アメリカ議会図書館に眠っていたテープが半世紀ぶりに発見されたというものなので、例外的に録音年で紹介します。モノラルのライブ録音ですが、これがとても良い音なのです。虚飾の無い、とても素直でリアルな音。しかも演奏も素晴らしい。モンクは独特のつんのめったようなリズムに特徴があって聴くのにエネルギーが要りますが、このライブでは滑らかに演奏していて、とても聴きやすいです。コルトレーンの音数多すぎるソロも流れるように軽快です。シャドウ・ウィルソンというドラマーのリズムが良いような気がします。

「For Real!」
ハンプトン・ホーズ
 1958


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ハンプトン・ホーズのピアノは聴く人を愉しませようとしている感じがして、とてもリラックスできます。特にこのアルバムは音が良いうえに、ベースがビル・エヴァンズ・トリオでの革新的な演奏で有名なスコット・ラファロというのが聴きどころで、ベースの音もクリアです。「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」と同じロイ・デュナンによる録音。

「Waltz For Debby」
ビル・エヴァンズ
 1961


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ピアノトリオが静かな曲を美しく演奏している有名なライブ盤。これは本当に素晴らしいアルバムです。演奏がシンプルで気持ち良くリラックスして聴けるわりに内容は高度で、何度も聴いているうちに耳が肥えてきます。スコット・ラファロのベースもポール・モチアンのドラムもすごく良い。奇跡的な名演奏。

半世紀以上前のライブハウスの雰囲気が伝わってくる良い録音で、お客の声や食器の音も聞こえます。小さ目の音で演奏しているので、マイクのレベルを上げて録音したんじゃないかな。

「Ballads」
ジョン・コルトレーン
 1963


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静かなバラードをアドリブほぼ無しで演奏しているので、ジャズに馴染みの無い人でも非常に聴きやすいアルバム。コルトレーンがわりと淡々と吹いているように聴こえますが、、小さい音でも余裕でコントロールしているところにシビレます。ロイ・デュナンと並んで有名なエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーによる録音。ルディ・ヴァン・ゲルダーはサックスにマイクをできるだけ近付けるらしいですね。ピアノの音が遠くてこもっているのはちょっと残念ですが、サックスの音はとても生々しく聴こえます。

「We Get Requests」
オスカー・ピーターソン
 1964


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村上春樹が、良い音のオーディオとは?という問いに、「We Get Requests」のレイ・ブラウンのベースの低音から高音までしっかり再生できることと答えていました。ジャズ好きのオーディオ・マニアが音質を調整するときに使う定番のアルバムです。左のドラム、真ん中のピアノ、右のベースの全てがクリアに聴こえて、音量のバランスも良いという素晴らしい録音です。特にレイ・ブラウンのベースの音に迫力があります。僕はオスカー・ピーターソンのファンでもないのですが、この音の良さは何回聴いても飽きません。上原ひろみが影響を受けたというアルバム。

「Getz / Gilberto」
スタン・ゲッツ ジョアン・ジルベルト
 1964


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ボサノバをブラジルからアメリカ経由で世界に広めた大ヒットアルバム。タイトルどおりジョアン・ジルベルトのボーカルとゲッツのサックスが対等に張り合っています。ボーカルとサックスに比べると、ギターとピアノのオシャレな伴奏の音量が控え目過ぎるような気もしますが、当時の技術的限界なのか、そこが良いのか、微妙なところ。エンジニアはその後ビリー・ジョエルのプロデューサーとして大成功するフィル・ラモーン。【'65 グラミー・最優秀アルバム賞、小編成ジャズ賞、アルバム技術賞】

「Mode for Joe」
ジョー・ヘンダーソン
 1966


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演奏も良いし、曲も良い、録音も良い。ハード・バップの名盤ですね。ハード・バップっていうのは、私立探偵が出てくる映画の追跡シーンで鳴るようなスピード感のあるカッコいいジャズです。ルディ・ヴァン・ゲルダーによる録音で、管楽器(テナーサックス、トランペット、トロンボーン)の音がとてもリアル、ヴィブラフォンとドラムも結構クリア。例によって、ピアノとベースはちょっと遠いですが。

「Abbey Road」
ビートルズ
 1969


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ビートルズの最高傑作であり、20世紀ポピュラー音楽の最高傑作アルバムだと僕は思います。完成度が高く個性的な名曲が並んでいて、曲ごとの雰囲気の違いが激しいにもかかわらず、なぜかアルバム全体としての統一感がある。音も良いです。エコーをあまり使わずに音の大小で奥行きを感じさせているところがミソなんじゃないかと思うのですが、ビートルズの他のアルバムとも違う、何か独特の重厚なサウンド。ただ、ビートルズのステレオ録音は全般に楽器の左右の定位が極端なので、ヘッドホンで聴くとやや違和感がありますね。スピーカーで少し離れたところから聴くのがオススメです。【'70 グラミー・アルバム技術賞】

「What's Going On」
マーヴィン・ゲイ
 1971


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ソウル・ミュージックの最高傑作ですね。ストリングスやホーンも入った分厚い音と凝ったアレンジで豪華なサウンド。曲ごとにボーカルのエコーの掛かり方やベースの音の太さが違うのがまた面白い。初めて聴いたとき、山下達郎がやりたいのはこれだったのか!と思いました。16分音符メジャー7thコードのギター・カッティング。

「Dark Beauty」
ケニー・ドリュー
 1974


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デンマークで録音されたピアノ・トリオ。音がめちゃクリア、ピアノの音がピカピカです。ニールス・ペデルセンのベースもハッキリくっきり。ドラムはスネアやバストラムをミュートしてるので、ジャズっぽくなくてフュージョン風に聴こえます。演奏は力強くファンキーなノリがあって、曲調も多彩で楽しめる、なかなかの名盤です。

このアルバムでは、ピアノとドラムはステレオで録っているので、鍵盤の高音部と低音部、シンバルやタムタムの左右の位置が分かるようになっていますが、ベースも含め全員センターにいます。今でも、ポピュラー音楽全般でベースとドラムはセンター定位というのが基本ですね。同じピアノ・トリオでも、昔は、例えば「Waltz For Debby」だったらドラムとベースがやや左、ピアノがやや右、「We Get Requests」はドラム左、ピアノ真ん中、ベース右という具合に、楽器の定位を分けてたんですね。ステレオ定位について、'60年代までは各演奏者の立ち位置のように考えられていたのが、'70年代以降は架空の音場空間でのバランスの良さを目指すようになったのではないでしょうか。

アマゾンのリンク先を見ると、このアルバムえらく高い値段が付いてますね。中古でも高い。輸入盤の方が安いですが、試聴できる日本盤の方にリンクしました。

「Aja」
スティーリー・ダン
 1977


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演奏やアレンジも含めた音の良さという観点でいうと、ポピュラー音楽の頂点といえるような作品ですね。これは本当に凄い、不朽の名作。名人級のミュージシャンが多数参加していますが、曲ごとにメンバーが違うのも聴きどころ。ドラマーはスティーブ・ガッド、バーナード・パーディーなど6人登場するのに対して、ベースは1曲を除いてチャック・レイニーに固定しているのが興味深いです。【'78 グラミー・アルバム技術賞】

「Gaucho」1980 

スティーリー・ダンは次のアルバム「ガウチョ」もすごく音が良いですけど、「ガウチョ」は曲調が地味なうえに、残響がほとんど無いいわゆるデッドなサウンドで、聴いていてちょっと息が詰まります。「エイジャ」の方が華やかで解放感があって良いと思います。

→ スティーリー・ダン 全アルバム レビュー

「Rickie Lee Jones」
リッキー・リー・ジョーンズ
 1979


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これはスティーリー・ダン的に音が良い。セッション・ミュージシャンを集めて作られていて、スティーリー・ダンと同じようにスティーブ・ガッドやジェフ・ポーカロ、マイケル・マクドナルドなんかが参加。音楽の方向性もロックとR&Bの中間というか、いろいろな要素が良い具合にブレンドされた感じがスティーリー・ダンにやや似ていますが、スティーリー・ダンほど凝りまくっていないし、ひねくれていないところが良いです。

リッキーさんは曲も全部自分で作っていますが、このデビュー作の完成度は凄いです。曲調は多様で、それぞれ独自の世界でありながらクセが無くて聴きやすい。すんなり普通に聴ける曲なのに、良く聴くととてもオリジナル。歌もうまい。ゆったりと落ち着いた音楽。【'80 グラミー・最優秀新人賞】


「A LONG VACATION」
大瀧詠一
 1981


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軽く聴き流すと、心地良いサウンドのオールディーズ風ポップだけど、じっくり聴いてみるとすごい音楽的情報量が詰まっている名作。楽器やコーラスのパートも多いし、同じ楽器も複数で演奏していたりするので、音がとても分厚い。すごい手間暇を掛けて凝ったことをしているが、全体としてはやっぱりポップで楽しい。日本のポピュラー音楽界では比類無い名盤です。

日本で最初にCD化されたレコード。でも、最初のバージョンはレベル設定が低すぎて音が悪かった。CDを買うなら20周年版か30周年版ですが、おまけが完全カラオケの30周年版をお薦めします(20周年版のおまけはメロディーラインを楽器で演奏している)。バックにどんな演奏やコーラスが入っているのかが良く判って、とても面白いです。

「ゴルトベルク変奏曲 '81」
グレン・グールド
 1981


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僕はクラシックはあまり聴かないんですが、例外的に好きなのがグールドです。グールドの音楽だけは、なぜか僕のポピュラー耳でも楽しんで聴けます。グールドはデビュー盤と同じ曲目を最後にもう一度録音して亡くなったわけですが、デビュー盤のモノラル録音とこのデジタル録音を聴き比べると、音質の違いとともに演奏の違いに驚かされます。音質の圧倒的な違いにも関わらず、音楽としてどちらが良いか、どっちが好きかと考えると甲乙つけ難い。でも、音質の良さによる価値も感じてしまう。いろいろなことを考えさせてくれる名盤です。【'83 グラミー・クラシックソロ部門賞】

「ゴルトベルク変奏曲 '55」


「TOTO IV」
TOTO
 1982


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僕はTOTOの最初の4作が好きで、若い頃に繰り返し聴いていました。内容的に一番良いと思うのは「ハイドラ」ですが、音が良いのは「TOTO IV」でしょう。特にドラムの音がそれまでのアルバムと全然違います。オーケストラやパーカッションも入った分厚いサウンドですが、どの楽器もクッキリときれいに聴こえます。当時主流だった24トラックのレコーダーを3台同時に使って録ったそうです。でもよく聴くと、曲は全然たいしたことなくて、サウンドだけのような気がしてくるのですが、それでもいい感じになっているのはジェフ・ポーカロのドラムが良いからだと思います。アルバム冒頭「Rosanna」のイントロ2小節、ドラムのパターンだけで音楽になっている!【'83 グラミー・最優秀アルバム賞、プロデューサー賞、アルバム技術賞】

「パールピアス」
松任谷由実
 1982


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生のホーンやストリングス、ビシっと引き締まったドラムの音、エコーをうまく使った奥行きのあるサウンドなど、同じ年に出た「TOTO IV」と音が似ています。でも、ベースが全然違う。「TOTO IV」ではベースの存在感がほとんど無いのに対して、「PEARL PIERCE」は高水健司のファンク系ベースの音が中心のアレンジだといってもいいぐらいです。こういう感じはユーミンの他のアルバムにも無いですね。曲もよくできているし、音も良い、ユーミンのアルバムでは一番の完成度だと思います。

「Nightfly」
ドナルド・フェイゲン
 1982


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完全デジタル録音されたレコードとして最初期の作品で、音が良いことでとても有名なアルバム。エンジニアが機材チェックに使う定番CDらしいですね。R&Bのコードをジャズっぽくしたような曲調もいい、オールディーズっぽいコーラスもいい感じ。一流ミュージシャンによる演奏はもちろん完璧、ただドラムの音が小さいうえにプレイが単調なのが唯一の不満です。

「ナイトフライ」冨田恵一

2014に出た冨田恵一の解説本を読んだら、このアルバムのドラムは打込みに近い処理がされていると書いてあって腑に落ちました。

→ ドナルド・フェイゲン アルバムレビュー

「ラフマニノフ ピアノ協奏曲 #2 #4」
ウラディミール・アシュケナージ
 1986


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以前、何かクラシックを聴こうと思ってアマゾンのクラシックのランキングを見てたらこのアルバムが入ってた。「2番」が「のだめカンタービレ」のテレビドラマに出てきたせいでした(僕は見てませんが)。アシュケナージさんの演奏はピアノの鳴りが良くて華麗だし、リズムのノリも滑らか。曲も変化に富んだ展開で退屈しない。オーケストラもしっかりと重厚な演奏。ピアノとオーケストラの音のバランスも良くて、音質もとてもクリア。ホールの残響多めですが、モヤモヤせず迫力のある音になっています。クラシックに詳しくありませんが、これは多分名録音盤でしょう。

「Nothing Like the Sun」
スティング
 1987


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このアルバムは曲も良いしアレンジもカッコイイ名盤ですが、サウンドもユニークです。耳に残るのはブランフォード・マルサリスのソプラノ・サックスやクリアトーンのギター、キーボードやストリングスの高音部など、スティングの声も含めて高い音ばかりです。低音はベースがいますが、中音域の音がとても少ない。そこに、今聴くと深すぎるような気もするエコーを掛けた結果、非常に涼しい感じになっています。中音域を分厚くして暑苦しくなるのを避けたんでしょう。

「プーランク ピアノ曲集」
パスカル・ロジェ
 1987/90


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プーランクという作曲家もロジェというピアニストも知らなかったのだけど、村上春樹が「意味がなければスイングはない」で、プーランクピアノ曲集で一番出来が良いと書いているのを読んで買った。CD2枚組で2時間以上、2分くらいの短い曲が続きますが、曲が多彩で面白い。演奏は活き活きしていて、気持ち良い。

録音もなかなか良いと思います。ロンドンの教会とパリのホールで演奏していて、残響多めです。弱く弾くところなんかは、ピアノの音が遠くて残響に埋もれているような気がしましたが、イヤホンで聴いてみるとそうでもなくて、逆にホールの響きが心地良く感じられます。スピーカーの場合は少しボリュームを上げると良いようです。

「Gling-Gló」
ビョーク
 1990


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ビョークというとオドロオドロしい打ち込みサウンドをバックに歌うイメージが強いですが、これはジャズボーカル。ピアノトリオの軽快な演奏で、アイスランドのポピュラーソングらしきものを楽しそうに歌っています。ほとんどの曲がアイスランド語なので耳慣れない響きですが、ビョークの歌は非常に巧い。パワフルかつ表現力が豊かです。ビョークの声に少しエコーが掛かっているだけのシンプルな録音で、ライブを聴いているような雰囲気。

「Ruby Baby」という曲、どこかで聴いたことがあると思ったら、ドナルド・フェイゲンも「ナイトフライ」でカバーしてました。

「Pop Pop」
リッキー・リー・ジョーンズ
 1991


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これは最近になって知りましたが、隠れた名盤です。ギター(ロベン・フォード)とベース(チャーリー・ヘイデン)のオシャレな演奏をバックに、子どものような奔放さと大人の表現力で歌ってます。リッキーさんの歌は適当に歌っているようでありながら、音程もリズムも完璧ですね。いっぺんにファンになりました。生楽器の静かな伴奏がとても良い音で録音されていて、雰囲気が素晴らしい。

「セレナータ・カリオカ」
小野リサ
 1992


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ボサ・ノヴァです。生楽器の伴奏の音が良い。ホーンがフルートとかクラリネットなどの木管主体で柔らかい音です。ナイロン弦のギターもアコースティック・ベースも小野リサの声もポルトガル語の響きも柔らかい。柔らかい音でゆったりとしたテンポの曲だけど、演奏はビシっと巧い。

「Six Pack」
ゲイリー・バートン
 1992


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ヴィブラフォン奏者ゲイリー・バートンが6人のギタリストとコラボするアルバムで、ヴィブラフォンの美しい音色をステレオで録ってあります。ピアノがステレオというのはときどき聴きますが、ヴィブラフォンはピアノより音域が狭いので、音が左右に大きく動きます。ヘッドフォンでバートンのソロを聴くと頭の中で音が踊り回るのが楽しいです。

リラックスした雰囲気の演奏が良い感じに録音されています。楽器の音量バランスが素晴らしい。ジム・ホールやジョン・スコフィールドなどのジャズギタリストの他、B.B.キングも参加しています。ギタリストごとの音色の違いもよく判って面白いです。

「GRP All Star Big Band」
GRP オールスター・ビッグ・バンド
 1992


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発売された当時に聴いて、ビッグバンドなんて古臭くて面白くないと思った記憶があります。そういえば音が良かったなと思い出して聴いてみると、やっぱり音が良いし演奏もめちゃくちゃ巧い。ソロでも活躍するミュージシャンが集まっただけあって、楽器の音やリズムのキレが非常に素晴らしい。音が良くて演奏も巧いんだから文句無し。少人数のバンドじゃなくてビッグバンドならではの良さというのも、今では判ります。

「The Sweetest Illusion」
バーシア
 1994


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僕が知っているポップのアルバムで一番音が良いと思うのはこれ。判りやすい売れ線狙いだけど、ボサノバやファンクなど緻密に練られたアレンジに感心します。生楽器と一人多重コーラスを多用した華麗なサウンドが良い。

「Keb 'Mo'」
ケブ・モ
 1994


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アコギでブルースをやってますが、(2曲カバーしている)ロバート・ジョンソン的な哀愁はあまり漂ってません。なんか安定感というか明るさがある。演奏はシンプルだけど音は非常に良いです。楽器や声の音量バランスやマイクとの距離感が絶妙。

「Pushing Against the Flow」
ロー・スタイラス
 1995


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女性ヴォーカルのファンク。スティーリー・ダンのプロデューサーであるゲイリー・カッツがプロデュースしています。ドラムはバーナード・パーディー師匠、トランペットはランディー・ブレッカー、バリトンサックスはロニー・キューバーなど、参加ミュージシャンも一流。ノリの良いファンクの曲に混じって、スティーリー・ダン的にちょっとヒネった感じの曲も何曲かある。特に3曲目「37 Hours」はスティーリー・ダンからの引用が散りばめられていて、ドナルド・フェイゲンがシンセサイザーを弾いています。

「High Life」
ウェイン・ショーター
 1995


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ウェイン・ショーターの演奏の魅力と作曲の才能が全開になっている作品だと思います。まず、ストリングスも入ったジャズ・オーケストラのサウンドが明るくて気持ち良い。オーケストラの代わりにシンセサイザーで済ませている曲もありますが、アレンジは一貫しています。耳馴染みの良いメロディーの一音ごとに違う和音を付けて複雑な響きにしているのが素晴らしい。

ソプラノ、アルト、テナー、バリトン・サックスを持ち替えてソロを吹いていますが、ソロで自己主張するのではなく曲やサウンドを活かすような演奏。

プロデューサーのマーカス・ミラーがブリブリとベースを弾いて、リズムとサウンドを引き締めています。【'97 グラミー・最優秀コンテンポラリー・ジャズ・アルバム賞 】


「The New Standard」
ハービー・ハンコック
 1996


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これはカッコイイ、ビシっと引き締まったサウンドのジャズです。ハービー・ハンコックのピアノの音が良い。非常にクリアかつ柔らかい音色です。他の楽器も同様。ピアノをステレオで録っていて、高い音が右から、低い音が左から聴こえます。ジャズ作曲家の狭間美帆が「私が影響を受けたジャズの1枚」に挙げています。【'96 グラミー・ジャズ部門賞】

「OK Computer」
レディオヘッド
 1997


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昔、村上春樹とトム・ヨークがお互いにファンだというので聴いてみたときは、雰囲気が暗過ぎて気に入りませんでしたが、だんだん値打ちが判ってきました。曲もなかなか良いし、さすがに名盤と言われるだけのことはあります。聞き流していると、ただエコーの深いロックという印象ですが、ヘッドホンやイヤホンで注意して聴くと、とても凝ったサウンドだということが判ります。曲ごと楽器ごとに異なる様々なエフェクトを掛けてあり、そのバランスが絶妙です。エコーによって人工的な空間の広がりは感じるのに、空気感は全くない、真空の宇宙サウンド。プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチの音ですね。【'98 グラミー・最優秀オルタナティブ・アルバム賞】


「Too Much Woman」
ブリジット・マクウィリアムズ
 1997



女性ソウル・シンガーのアルバム。発売当時、タワーレコード心斎橋店の試聴機に入っていたのを聴いて、音の良さが気に入って買いました。ソウル・ミュージックの録音は、低音をブリブリ効かせる一方で高音を抑えめというか、わざとちょっとヌケが悪い感じの音質にしてある場合が多いですが、このアルバムは何か透き通った感じのサウンド。ソウルにしてはアコースティック・ギターを多く使っているからじゃないかと思います。アコギが出てこない曲は、普通のソウルみたいなちょっと詰まった音に聴こえるのもある。

歌い方や曲の雰囲気はマリーナ・ショウの名盤「Who Is This Bitch, Anyway」に似てます。バックの演奏がうまいところも似てる。オルガンを弾いているのは、ビートルズの「Get Back」で有名なビリー・プレストン。


「Cozy」
山下達郎
 1998


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昔のタツローのアルバムは曲調やサウンドに一貫性がありましたが、'90年代以降、オリジナルアルバムの発表感覚が6、7年になり、内容がタイアップ曲の寄せ集めみたいになった結果、統一感が無くなってしまいました。そのかわり、曲ごとにいろいろなサウンドが聴けるという楽しみがあります。アナログ録音の時代には深いエコーで全ての声や楽器が渾然一体となったサウンドでしたが、デジタルになってからは全然違う非常に分離の良い音。曲調はあまりファンクではなくなり、ポップです。

'90年頃に読んだインタビューで、タツローさんは「ヘッドフォンで聴くことを想定して音を作っている」と言ってました。このアルバムも非常に高音質ですが、スピーカーで聴いたときよりも、ヘッドフォンやイヤフォンで聴いたときの方がサウンドの細部が判って面白いです。そのインタビューでは、高級オーディオを揃えるより、ソニーのMDR-CD900というヘッドフォンを直接CDプレイヤーに繋いで聴くのが一番だとも言っていたので、買いましたよMDR-CD900。あれから四半世紀経った今でも現役で、息子が使っています。



「The Globe Sessions」
シェリル・クロウ
 1998


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乾いた感じで解放感のある心地良いサウンド。カントリーっぽいロックにときどきビートルズ中期みたいな音が混じる。ディストーション・ギターの音量が控え目なところもビートルズ的。【'99 グラミー・最優秀ロックアルバム賞、アルバム技術賞】

「Reptile」
エリック・クラプトン
 2001


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音圧が高いです。わりとリラックスした音楽なのに迫力がある音。それってどうなのかなという疑問も少し残りますが、とにかく音質はすごく良い。

iTunesのカテゴリはブルースということになってますが、ドラムがスティーブ・ガッド、ベースがネイサン・イーストというリズム隊なのでフュージョンっぽいサウンド。曲調も明るくて、楽しく聴けます。スティービー・ワンダーの「I ain't gonna stand for it」のカバーが良かった。村上春樹がジョギングのときに聴くのに良いと言ってました。

「Come Away with Me」
ノラ・ジョーンズ
 2002


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珍しくアコースティックの音楽で大ヒットしたアルバム。ノラ・ジョーンズのハスキーだけど甘い声とバックの生楽器の音が良いです。よくジャズ・ボーカルと言われますが、ジャズというよりカントリーじゃないでしょうか。【'03 グラミー・最優秀アルバム賞、新人賞、アルバム技術賞】

「Belly of the Sun」
カサンドラ・ウィルソン
 2002


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ジャズ歌手のカサンドラ・ウィルソンがブルースを歌ってるんですが、音の雰囲気が良いです。クロスロード伝説で有名なブルースの聖地、ミシシッピ州クラークスデイルの古い駅舎で録音したというライブっぽい生楽器の音。いわゆる空気感が伝わってくるような気がします。それは残響音の録音具合がちょうど良いということなんでしょう。

「沖縄の風」
夏川りみ
 2004


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2008年に石垣島に行ったら、どこでも夏川りみの「涙そうそう」がかかっていました。帰ってからまた聴きたくなり、このアルバムを買ったわけです。沖縄の歌ばかりだというので民謡調なのかと思ったら、三線より生ギターの響きが印象に残る爽やかなアレンジのポップでした。夏川りみの歌はとても巧いし、録音も素晴らしい。

「LION」
奥田民生
 2004


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奥田民生のアルバムはどれも音が良い。特にこのアルバムはサウンドの追求をテーマにして作られているような気がします。メロディーもリズムもアレンジも非常にシンプルな曲が多くて、曲よりも音の響きが前面に出ている感じです。「サウンド・オブ・ミュージック」という曲まであるし。タミオのアルバムの中でも特にポップな曲が多くて楽しい作品だと思います。

→ 奥田民生 アルバム レビュー

「One Fine Day」
大貫妙子
 2005


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声がきれいだし曲もオシャレだなあと思って聴いていると、どうもそういう女性ボーカルものにありがちな軽いサウンドじゃないことに気付きました。ベースやドラムが頑張っていて、足腰のしっかりした感じの音です。なんとツインドラムの曲も2曲ある。また、ほとんどの曲が歌も同時の一発録りだそうです。大貫妙子のミュージシャン魂が伝わってきます。

「In Between Dreams」
ジャック・ジョンソン
 2005


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呟くような歌とアコギの音がきれいに録音されています。マイクが近くて残響のほとんど無いデッドな音。歌もギターもシンプルに聴こえるけど、実はメチャ巧いし、曲もかなり良いです。

「琴線」
納浩一
 2006


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日本人最高のベーシスト納浩一のアルバム。アコースティック・ベースの音がとても良い音で録音されています。もちろん演奏も良い。

「夢助」
忌野清志郎
 2006


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スティーブ・クロッパーのプロデュースによりメンフィスで録音。スティーブ・クロッパーはオーティス・レディングのバックを務めたMG'sでギターを弾いていた人ですね。「ブルースブラザーズ」で有名な「I Can't Turn You Loose」に似た曲や「Dock of the Bay」みたいな口笛の出て来る曲(細野晴臣作曲)など、オーティス・レディングへのオマージュに満ちた内容です。

シンプルなバンドサウンドですが、すごく音が良い。特にドラムを少し遠めに録っているのが空気感を生んでいて良いです。メンフィスのミュージシャンの演奏もレイドバックしていて素晴らしい。

'92年に同じくクロッパーのプロデュース、メンフィス録音のアルバム「メンフィス」も出ていますが、この「夢助」の方が断然音が良いと思います。

→ 忌野清志郎の本

「Morph The Cat」
ドナルド・フェイゲン
 2006


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ドナルド・フェイゲンのアルバムの中で一番音が良いんじゃないかと思います。「ナイトフライ」の時代と比べれば、デジタル録音技術の進歩もあるのかもしれませんが、2012年の「サンクン・コンドズ」よりもこっちの方が良い。

昔のように曲ごとに違うミュージシャンを呼んでくるのではなく、全曲だいたい同じメンバーで演奏してます。そのせいか、バンドらしいまとまりがあるような気がするし、キース・カーロックのドラムが他のアルバムのように打ち込みっぽくなくて、生演奏らしいところも良いです。

「ワルツを踊れ」
くるり
 2007


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ウィーンで4ヶ月掛けてオーケストラとともに録音したという作品。といってもフルオーケストラが入っているわけではなく、曲ごとにストリングスだけ足したとかホーンだけという程度。バンドだけの曲もある。ロックにちょっとオーケストラが加わると、やっぱりビートルズ、ポール・マッカトニーっぽい感じになりますね。

クラシック音楽の都でロックを録音してどうなったかというと、さすがにストリングス&ホーンの音が良くて、バンドの音は控え目に聴こえる。トータルではサウンドに広がりがあって、岸田繁のセンスの良い曲が活きている。くるりのアルバムでは一番の名作なんじゃないでしょうか。


「Esperanza」
エスペランサ・スポルディング
 2008


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超巧いベーシストが美しい声のヴォーカリストで素晴らしい作曲家でもあるという天才。良い音だなあと思える音楽というのを突き詰めると、「高音の歌や楽器と低音のベースがどちらも巧くて良い音である」という点が重要になるわけですが、この人の場合は一人でその両方を兼ね備えています。とにかく歌も巧い、ベースも巧い、曲もカッコイイ。録音も素晴らしい、文句無しの傑作だと思います。

→ エスペランサ・スポルディング アルバム レビュー

「Sweet Nest」
コトリンゴ
 2008


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表現力豊かなピアニストで、フワフワ声の個性的ヴォーカリストでもあり、センスの良い作曲家でもあるという、この人も天才。ポップな曲だけど、よく聴くと複雑なコード進行や凝ったリズムのユニークなアレンジ。サウンドも細部まで配慮が行き届いていて、耳に心地良い。

→ コトリンゴ アルバム レビュー


「Jazz in the Garden」
スタンリー・クラーク
 2009


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スタンリー・クラークのリーダー作で初めてのアコースティック・ベースのアルバムということで、ベースの音が良いです。ピアノが上原ひろみ、ドラムがレニー・ホワイトというピアノトリオ。クラークとホワイトは'70年代のチック・コリアのバンド、リターン・トゥ・フォーエバーのメンバーでしたが、上原ひろみはアマチュア時代にチック・コリアに才能を見出されたというのも何かの縁か。

スタンリー・クラークが良い音でベースを鳴らしたいだけという感じのリラックスした演奏で、上原ひろみも普段の曲芸的速弾き大会ではなく控え目ながら個性を出していてすごく良い。上原ひろみ本人のアルバムより聴きやすいです。

「音楽堂」
矢野顕子
 2010


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神奈川県立音楽堂というホールで録音された矢野顕子の弾き語りアルバム。'70年代に日本で最初のプロのエンジニアになったという吉野金次による録音です(録音のいきさつについてはこちらに詳しい記事あり)。ブックレットの写真を見ると、ピアノの周りにマイクが6本、ステージの両端にも3メートルくらいのスタンドでマイクが立ててある。あと、ステージ上に客席に向けたスピーカーが置いてあるのは、ボーカルを鳴らしてホールの残響を付けるためでしょうか。

小さいPC用スピーカーやイヤホンで聴くと、ボーカルは近くて音像が小さいのに対して、ピアノは遠くてホールの残響多めです。同じ人が「弾き・語って」いるようには聞こえない。何かちょっとヘンだと思ってしまいましたが、普通のスピーカーで聴いてみると、ホールでコンサートを聴いているようなバランスでとても良い音です。特にピアノの低音部にこだわっているらしく、太い音です。

「Baroque」
大西順子
 2010


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リーダーである大西順子さんはどちらかというとリズムセクションとして後ろに下がっている感じですが、バンドとしては荒々しく力強い演奏です。ホーンではトロンボーンとバスクラリネットが印象的だし、半分くらいの曲で左右2本のベースが鳴っているという低音重視な編成。録音も生々しい音で良い。

どうもピアノの定位が右に低音、左に高音になっているようなんですが、これは珍しいというか、僕は他に聴いたことがありません。


「Chamber Music Society」
エスペランサ・スポルディング
 2010


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ジャズとクラシックの融合というか、ピアノトリオにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが加わったジャズ。エスペランサのコントラバスとよくなじんでます。

曲調はあまりポップではなく前衛的な雰囲気。エスペランサは歌もメチャクチャ巧い。



「That's Why God Made the Radio」
ビーチボーイズ
 2012


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何十年も分裂状態だったビーチボーイズが、デビュー50周年を記念して一時的に再集結して作ったアルバム。新曲ですが、昔のビーチボーイズの曲の雰囲気を再現しています。

当然、昔に比べると圧倒的に音が良い。音の悪い時代には充分だったシンプルな伴奏も、高音質のデジタル録音で聴くと音が薄い感じがします。でも左右や遠近で立体感のあるコーラスはさすがに気持ち良い。伴奏はサポート・ミュージシャンに任せて、ビーチボーイズはほぼ歌に専念してるので、メロディーとコーラスだけ聴けば良い作品であり、それだけで値打ちがあると思います。


「Nathan East」
ネイサン・イースト
 2014


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セッション・ベーシストの大御所ネイサン・イースト、初のリーダー作。フュージョンのアルバムかと思ったら、ジャズ、ポップ、ロックのカバー集で、歌モノも何曲か入っています。スティービー・ワンダー、エリック・クラプトン、マイケル・マクドナルドなんかも参加していて、変化に富んだ楽しい内容。「サー・デューク」のアレンジが面白い。音も凄く良いです。

「Amplified Soul」
インコグニート
 2014


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'90年代にアシッドジャズがはやったときにアルバム1枚だけ聴きましたが、incognito=匿名という名前のとおり、なんか個性が感じられないなと思いました。この「Amplified Soul」を聴いてみると、歌も演奏もビシっと決まってますが、音楽的には20年前から全然変わっていない。それどころか、マーヴィン・ゲイから変わらない、伝統的ファンクというかソウル。個性とか進化とか要らん、このサウンドがいいのだ~という感じ。とにかく音はすごく良いです。


「70 STRONG」
スティーブ・ガッド・バンド
 2015


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アルバム全体を通して静かでリラックスした雰囲気で一貫しています。どの曲もコード進行がほとんど無くてシンプルなリズムパターンを延々と繰り返しているうえに、テーマのメロディもアドリブも非常に控え目。つまり音楽の3要素といわれるリズム・メロディ・ハーモニーの全てがシンプルなわけです。

その結果どうなったかというと、サウンドが聴き手に迫ってくるんですね。単調な気もするけど気持ちイイ音楽だなあと思いつつ聴き流しているうちに、熟練ミュージシャンの演奏の細部が聴こえてきます。引いた方が伝わるというメッセージを含んだ音楽。音楽的傾向は全然違いますが、奥田民生の「Lion」と通じるところがあります。

「The Epic」
カマシ・ワシントン
 2015


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テナーサックス、トランペット、トロンボーンの3管が中心のバンドと、そこにストリングスやコーラスも加わったジャズ・オーケストラの演奏が半々で、なんか前衛的な感じなのかと思ったら、意外に素直というか聴きやすい音楽でした。フュージョンぽい曲も、ソウルフルなヴォーカルが入った曲もあります。大人数の演奏ながら分離の良い素晴らしい録音。3枚組3時間弱というボリュームなので、聴き応えがあります。

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