2009/10/15

忌野清志郎の本

「瀕死の双六問屋」



→ アマゾンで見てみる


短い文章とレコード評をセットにした雑誌連載をまとめたもの。口述ではなく唯一まじめに自分で書いた本というだけあって、内容も形式もすごく面白い。ちょっとシュールな超短編小説の回もあれば、わりとストレートな文章の回もあって、虚実のブレンド具合がうまい。自由自在に書いている。やっぱり言葉の使い手ですね。

あとがきによると、キヨシローは2006年に喉頭ガンと診断されたとき、声を失いたくないので手術をしなかった。手術を避けて放射線治療をしても唾液線を失うので1、2曲しか歌えなくなる。それで、治療しなければ余命半年と宣告された現代医学から逃げ出して、代替医療に切り替えたとのこと。この話は本文でキヨシローが書いていることと言行一致している。


「ロックで独立する方法」



→ アマゾンで見てみる


音楽で食べていくということについて、明晰に語っている。前衛は売れないからイヤだが、売れセン狙いのポップもイヤだ。そういうジレンマを抱えながら、自分なりのオリジナリティを模索していくしかないという。これは心ある表現者は必ず意識することだろう。

岡本太郎の名著「今日の芸術」をすごい本だと紹介している。芸術にはアヴァンギャルドとコンテンポラリーがあって、アヴァンギャルドが時代をぶっ壊し、コンテンポラリーはそれをうまく取り入れて流行にする。そういうことが書いてある、と。今の時代の閉塞感は、みんなが安全で儲かるコンテンポラリーに回ってしまったせいだとキヨシローは言う。

音楽ジャーナリズムにも疑問を呈する。GLAYのコンサートに何十万人とかB'zのベストアルバムが何百万枚とか、音楽の話題じゃなくて統計の話題じゃないか。インタビューでもなぜこの曲を歌うのかとか歌詞のことは訊かれるが、音楽そのもののことを全然訊かれないのだという。

その他、音楽業界の問題点とそれに対処する苦労を自伝的にストレートに語っていて、非常に面白かった。ミュージシャンに限らず、社会の中で独立して生きるということについて、示唆に富んでいる。


「忌野旅日記」



→ アマゾンで見てみる


いろんなミュージシャンとの交遊録みたいなもの。だいたいは昭和の話だからちょっと古いけど、若い頃の桑田佳祐や坂本龍一なんかも登場してなかなか面白い。細野晴臣や井上陽水と曲を作る話も興味深い。'91年にブルースブラザーズ・バンドが来日したときにスティーブ・クロッパーたちとの交流が始まるあたりのことも詳しく書いてある。

筆で描いたイラストも巧い。



0 件のコメント:

コメントを投稿