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2017/06/11

「たとえ世界が終わっても」 橋本治

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タイトルの「世界」は資本主義やグローバリズムのこと。なぜそういうものが終わるのかについて、ヨーロッパと日本の近代史をザックリと語っている。なかなか面白かった。

橋本治は「貿易なんて西洋人の陰謀」と言っている。日本の近代は、大砲の付いた船でやってきた西洋人に「俺のとこの商品を買え」と脅され、近代化しないと欧米に侵略されてしまうというところから始まった。そのとおりだと思う。

資本主義やグローバリズムは飽和によって終わる。そういう世界が終わるのは、陰謀の終焉でもあるから、良いことなんじゃないだろうか。

その後にくるのは、あまり儲からない、トントンで回る経済だ。

2009/06/19

「大不況には本を読む」 橋本治 (中公新書ラクレ)


村上春樹が1984年を振り返るのとシンクロして、橋本治は「1985年にもしも日本が…」という話をする。1985年というのは、プラザ合意で円高になることが決まり、中曽根総理が「国民一人当り千ドルの外国製品購入を」と呼びかけた年である。ついでに僕が就職した年でもある。僕の勤め先は輸出メーカーで、その後どんどん円高になって大変だった。

1985年に日本はもう世界一の経済大国かつ一億総中流社会を実現して豊かになっていた。その後も輸出に頼って経済成長を続けようとしたからバブルが発生するし、WTOが日本に農産物の輸入枠拡大を迫って日本の農業が苦しくなる。橋本治は、そこで輸出をやめたらどうなっていたかと問う。僕は輸出メーカーに勤めながらも全く同じことを考えて葛藤していた。

最近、農業への関心が高まっているが、日本の農業を成り立たせるには工業とのバランスをどう取るかが問題になるはずなので、この話は過去の日本についての思考実験ではなく、これからどうするかという問題なのだ。

ところで、不景気に人が本を読むのはなぜか。1、不景気になるとお金は無いが時間があるから。時間を潰すのにはお金のかからない本が最適。2、不景気になると「これからどうすればいいのか」を考えざるをえないから。

現在の大不況は日本でいうと近代150年の行き詰まりだから、この150年を見直すべし。そのためにも本を読むしかない。何を読めばいいのかというと、何でもいいから片っ端から、とのことである。

2008/01/09

「日本の行く道」 橋本治 (集英社新書)


今の日本の社会は何かがおかしい。しかもその外側には地球の温暖化という問題もある。日本はいったいどういう道を行けばいいのか。その問題を延々と回りくどく考えていった結果、結局日本は1960年代前半に戻ればよいという話になる。

それから明治維新・産業革命の分析をする。日本は江戸時代既に工業性手工業が完成して平和に暮らしていたので、産業革命の必要は無かったのだ。当時は開国して近代化を目指すしか無かったが、行き詰ってしまった今となっては、改めて別の選択をすればいいのである。日本は江戸時代に戻ったっていいのかも知れない。

江戸時代では極端なので60年代前半で妥協してはどうかというわけである。それで貿易戦争にはそこそこに勝つことにする。勝ちすぎると国内の農業が壊滅してしまう。日本は工業製品を作り過ぎで、農業製品は作らなさ過ぎなのだ。必要な物を必要なだけ作る経済に戻せばよい。

一番面白かったのは、著者が「60年代前半に戻す」というときの具体的なイメージだ。60年代前半には新幹線もコンピュータもあった。無かったものは超高層ビルである。だから「60年代前半に戻す」とは、今ある超高層ビルを壊すことなのである。それで減ったオフィスや住居を地方に移転すると地方が活性化する。

また、経済発展の象徴である超高層ビルを日本が壊し始めると、日本の真似をして経済発展しようとしている中国がうろたえる。そうやって中国にも地球温暖化のことなんかも真剣に考えてもらうというのだ。

2007/02/24

「このストレスな社会! (ああでもなく こうでもなく 5) 」 橋本治


「広告批評」誌の時評「ああでもなくこうでもなく」シリーズ第5巻。政治やスポーツや社会的な事件についていろいろ語っていて、いつもどおり面白い。アルビン・トフラーと橋本治さえ読んでおけば、今の世の中がどうなっているのかが大体判るような気がする。僕が考えていることと重なる部分も多くて勇気付けられる。

今までの4巻と比べて、今回はちょっとだけポジティブな話が多かったような気がする。著者が肯定的に評価しているのは、アテネオリンピックの体操男子チームとイチローと村主章枝とオシム・ジャパンで、全部スポーツ関係だ。彼らの活躍はこれからの日本人のあり方のヒントになるという。スポーツ選手から学べというのだから、小脳論に近いわけである。

2006/08/22

「失楽園の向こう側」 橋本治 (小学館文庫)


橋下治が例によってバブル経済崩壊後の日本人のあり方についてじっくりと語り方向性を示している。この人のこういう本はいっぱい出ていて僕はほとんど全部読んでいるのだが、これは一番軽快で面白くて読みやすい。中身は2000年から2003年に漫画雑誌「ビッグコミックスペリオール」に連載されていた文章である。僕はその頃よく昼休みに一人で会社の近くの小さな喫茶店に行って、オムライスを食べながらスポーツ新聞とスペリオールを読んでいたのだった。

冒頭に映画「マトリックス」の話が出てくる。「赤い薬を飲んで真実を見たら貧しいおかゆしか食うものがない」という「マトリックス」の設定があきれるほどリアルで現代人のあり方そのものだという。僕が最近読んだ3冊の本に立て続けに「マトリックス」の話が出てきた。僕も「マトリックス」は小脳論的世界観の映像化であると思っている。

他にも「自分とはボーっとしている状態の中に存在するもの」というような、ほとんど僕が言っているのと同じようなことが書いてあって頷かされる。他にはワールドカップやナカタについての分析(ただし2002年当時の)もあって面白かった。

2005/12/04

「乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない」 橋本治 (集英社新書)


バブルが発生したのはもう投資先が無くなったからで、投資先が無くなったのはもう必要が満たされたからである。その状況は今も続いている。著者は同じようなことを何年も前から言っていて、僕もそのとおりだと思う。メーカーの技術者である僕の仕事場でもみんなそう思っている。ようするに、必要なものはもうみんな持っているから何かを売るのは大変なのである。

そういう状況にもかかわらず経済発展重視の社会構造のままでやり続けているから日本の社会は破綻しかかっている。JR西日本の脱線事故やマンション強度偽装事件なんかはその証拠である。

じゃあどうすればいいのいかについて著者は具体的には言わないが、最後に「我慢」というコトバが出てくる。僕も最近ガマンについて考えていたので、我が意を得たりであった。