2008/10/27

「三四郎」 夏目漱石 (新潮文庫)


夏に「細雪」を読んだらアマゾンのおすすめ商品に昔の日本の小説が並ぶようになった。「細雪」で昔の話でも結構楽しめることが分かったので、今度は漱石を読んでみることにした。

田舎から出てきてまだ地に足が着いていない感じの東大生の呑気な生活。友人が若気の至りの芸術論をぶったりするのが楽しそうだ。この感じは庄司薫の「赤頭巾ちゃん」シリーズによく似ている。東大周辺の話だし、主人公が受身で友人に振り回されたり、大胆な女性が登場したり、考えてみればソックリである。庄司薫はサリンジャー+漱石だったのか。

明治41年の日本人は既に近代化・西洋化が半分完了していたのだなあ。洋服も和服も着て、ナイフとフォークでディナーを食べ、蕎麦屋で酒を飲む。物質的にはそういう風に半々で済ませればよいが、困るのが男女の関係である。自由恋愛と見合い結婚を折衷するわけにはいかない。特に頭の中だけ自由になって経済的に自立できない女性が困る。それは「細雪」でも描かれていた問題であった。

三四郎を翻弄するミネ子さんはそのへんの困った感じをストレイシープという謎かけで表現するわけだが、漱石は日本全体が近代化・西洋化によって困った状態にあると言っているのだと思う。それは今でも解決していないような気がする。

文章の調子が軽くてさすがにリズムが良い。ユーモアがあって面白かった。

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