「Can't Buy A Thrill」 (1972)
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スティーリー・ダンといえば洗練を極めたサウンドの印象しかありませんでしたが、ファーストアルバムを聴いてみると、意外にもユルイ雰囲気のロック。ドナルド・フェイゲン以外にもいろんな人がヴォーカルをとっているし、得意のややこしいコード進行もまだ控えめで、スティーリー・ダンらしくない。というか、こういう普通のロックに近いところから始まって、いろいろと試行錯誤しながら音楽性や音質を突き詰めていった末に「Aja」のようなスティーリー・ダンの世界に到達したのだなとわかる。完成後のスティーリー・ダンのサウンドの先入観を持って聴くとちょっと意外な感じがします。
「Countdown To Ecstasy」 (1973)
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2枚目になるとヴォーカルはフェイゲンに固定。1曲目「菩薩 Bodhisattva」はブルース進行の軽快なロックンロールかと思いきや、そこはスティーリー・ダンらしくヒネリの効いた展開で面白い。その他の曲もリラックスしたサウンドで、後の「Aja」や「Gaucho」といった傑作アルバムのビシビシにタイトな感じとは違う。哀愁漂うスティールギターが鳴ってカントリーっぽくなったり、簡単なコードパターンを延々と繰り返してファンクっぽくなったりしながら、全体としてはスティーリー・ダン。音楽性の幅が広いということですね。
「Pretzel Logic」 (1974)
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3作目ということで、だんだんとスティーリー・ダンらしいタイトなサウンドになりつつある。でも、曲は意外にアッサリしていて、シンプルで軽快にまとまっています。日本発売当初「さわやか革命」という副題が付いてたそうで、なんじゃそりゃ?と思いますけど、たしかにちょっと爽やかなサウンドと言えなくもない。
このアルバムまではバンドの体裁を保っているが、次作からベッカーとフェイゲンの2人がスタジオ・ミュージシャンを集めてアルバムを作るようになる。そう思って聴いてみれば、バンドとしては一応まとまってきたものの、何か物足りないような気もしてきます。そういう後知恵を抜きに素直に聴けば、なかなかポップな曲が揃った聴きやすいアルバムだとも思います。
「Katy Lied」 (1975)
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バンドが解体されてセッション・ミュージシャンが演奏するようになる第1作目ですね。参加しているミュージシャンはラリー・カールトン、ジェフ・ポーカロ、チャック・レイニー他多数。前作までと比べると、たしかに演奏は巧いですね。特にリズムがカッチリと引き締まっている感じがします。録音も良くなっていて、特にドラムの音が近い。以前はバンドらしく各楽器の音が一体になったようなサウンドでしたが、このアルバムでは音の分離が良くなって非常にクリアに聴こえます。我々が今スティーリー・ダンの音と思っているサウンドは、このアルバムから始まったと言えるでしょう。
「The Royal Scam」 (1976)
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僕はスティーリー・ダンのアルバムのなかでこれが一番気持ち良く聴けます。なんか演奏の具合が非常によろしいです。特にチャック・レイニーのベース(ウォルター・ベッカーもクレジットされてますが、多分1曲だけじゃないかな)。レイニーさんのベースラインは素晴らしくて、アルバム全体がR&Bっぽく人間味のあるリズムのノリで統一されている感じがします。曲のアレンジも多様で、アルバムの流れに緩急が付いていてカッコイイ。
余談ながら、2曲目のイントロをどこかで聴いたような気がして記憶を辿ると、ユーミンの1978年のアルバム「流線型'80」に入っている「キャサリン」でした。他にも細かいところでユーミンの曲のアレンジに似ている箇所がいろいろあるなと思いつつ聴いていくと、最後の曲のイントロがまた 「流線型'80」の「かんらん車」そっくり。松任谷正隆アレンジの元ネタの宝庫です。
「Aja」 (1977)
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スティーリー・ダンの作品中、最も高く評価されているのがこのアルバム。コード進行とかアレンジとか演奏技術といったテクニカルな面で、ポップ界最高峰と言えるでしょうね。ドラムはいろいろな人が叩いていますが、ベースは前作に続いて一曲を除きチャック・レイニーです。レイニーさんのベースは音の強弱の付け方が素晴らしい。特に「ペグ」のベースが気持ち良い。グルーブを感じます。
表題曲「Aja」では、サックスの大御所ウェイン・ショーターのテンションの低いソロと、ドラムの神様スティーブ・ガッド入魂のソロの対照的な絡み合いも聴けます。他にもギターのラリー・カールトン、キーボードのジョー・サンプルなどジャズ、フュージョン界の大物ミュージシャンが多数参加しています。その大物たちが地味な伴奏に徹していて、聴けば聴くほど質の高さが判ってくる超名盤です。
→ このアルバムの解説本「スティーリー・ダン Aja作曲術と作詞法」についてはこちら
「Gaucho」 (1980)
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このアルバムは「Aja」に比べると地味に聴こえます。音数が少なくて静かな曲ばかりだし、派手な楽器ソロもない。スティーヴ・ガッド、ジェフ・ポーカロ、バーナード・パーディーという素晴らしいドラマーたちも、シンプルなパターンを叩き続けています。でも、そこがいい。何とも言えず渋い味わいがあります。地味で静かな曲というのは演奏のアラが出やすいもので、それがこれだけカッコイイということはメチャクチャ巧い証拠ですからね。押し付けがましくない音楽なので、穏やかな気持ちで聴けます。
「Two Against Nature」 (2000)
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前作から20年も経って出たアルバム。その間にアナログからデジタルの時代に変わり、以前より分離のハッキリした硬い音質になりました。曲の雰囲気は全体的にロックからかなりファンクに寄ってます。このファンクっぽいサウンドは1993年のドナルド・フェイゲンのアルバム「Kamakiriad」と似ていますね。
この軽い音のドラムは打込みのようですが、ドラマーは6人も参加しています。その人たちのドラムの音をサンプリングして鳴らしているんでしょう。でも、どの曲もドンパンドンパンと単調過ぎるのがいただけません。以前のアルバムでは、同じようにシンプルなリズムをドラムの名手たちが叩いていましたが、それとは全然違って、アルバム全体が単調に感じられます。BGM的に聞き流していると気にならないのですが、真剣に聴くと気になります。
「Everything Must Go」 (2003)
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アルバムタイトルを直訳すると「全部売れなきゃいけない」ということで、閉店セールみたいな意味なんですね。だからスティーリー・ダン最後のアルバムと言われているわけです。ベースをウォルター・ベッカー、ドラムはキース・カーロックに固定して、バンドという原点に回帰した結果、前作のように単調ではなく、活動中断前の幅広い音楽性を感じられる曲調に戻っています。2000年代に復活してからの2枚のうちでは、このアルバムの方が断然良いと思います。
「Alive In America」 (1995)
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スティーリー・ダンのライブ盤。スタジオで緻密に練り上げたアルバムを作るスティーリー・ダンがどういうライブをするのかと興味津々で聴いたみると、スタジオ盤のアレンジをほぼ再現していて感心。さすがです。スタジオ録音のキッチリした感じもある程度保ちながら、ライブ演奏らしい活き活きとした雰囲気があって、非常に良いです。曲も名曲揃いでベスト盤みたいだし。デニス・チェンバーズのパワフルでタイトなドラムが良い。ベースも良い。
「スティーリー・ダン Aja作曲術と作詞法」
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【帯より】ドナルド・フェイゲンが創作の秘密を語った初のオフィシャルブック。解説:冨田恵一。
Ajaの制作過程のこぼれ話にまあまあ面白い部分もありますが、内容はやや散漫。かなりのスティーリーダン・マニア向け。
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→ ドナルド・フェイゲン アルバムレビュー
→ 音の良いCDのリスト
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