2009/07/04

「吾輩は猫である」 夏目漱石 (新潮文庫)


意外に分厚くて、文庫本で500頁以上ある。最初のうちは退屈で200頁くらい読んだところで挫折しそうになったが、段々面白さが判ってきて後半は楽しめた。漱石の文明批判、西洋批判はお説ごもっともで、100年後の今でもそのまま通用する。

漢語混じりの江戸落語の口調で猫が皮肉っぽいことを言うのが面白いのだが、猫が語るというのはファンタジーだ。それ以外は完全なリアリズムなのに、なぜ猫が語るという設定なのだろうか。

形式上は猫が語る一人称小説だが、最初と最後以外は猫視点をやめてもほぼ同じ表現のまま三人称で書けるはずである。漱石は神様視点の三人称を避けるための工夫として猫視点を創り出したのだと思われる。

最初と最後に語り手が物語の外側で語る構造、大したストーリーがなく断片的な話題の集積であるところなどは村上春樹の「風の歌を聴け」と同じである。「モンキービジネスvol.5」のインタビューによると、村上春樹さんも最近漱石をまとめて読み直して面白かったとのこと。ただし「こころ」は何度読んでも好きになれないという。

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