2009/06/19

「大不況には本を読む」 橋本治 (中公新書ラクレ)


村上春樹が1984年を振り返るのとシンクロして、橋本治は「1985年にもしも日本が…」という話をする。1985年というのは、プラザ合意で円高になることが決まり、中曽根総理が「国民一人当り千ドルの外国製品購入を」と呼びかけた年である。ついでに僕が就職した年でもある。僕の勤め先は輸出メーカーで、その後どんどん円高になって大変だった。

1985年に日本はもう世界一の経済大国かつ一億総中流社会を実現して豊かになっていた。その後も輸出に頼って経済成長を続けようとしたからバブルが発生するし、WTOが日本に農産物の輸入枠拡大を迫って日本の農業が苦しくなる。橋本治は、そこで輸出をやめたらどうなっていたかと問う。僕は輸出メーカーに勤めながらも全く同じことを考えて葛藤していた。

最近、農業への関心が高まっているが、日本の農業を成り立たせるには工業とのバランスをどう取るかが問題になるはずなので、この話は過去の日本についての思考実験ではなく、これからどうするかという問題なのだ。

ところで、不景気に人が本を読むのはなぜか。1、不景気になるとお金は無いが時間があるから。時間を潰すのにはお金のかからない本が最適。2、不景気になると「これからどうすればいいのか」を考えざるをえないから。

現在の大不況は日本でいうと近代150年の行き詰まりだから、この150年を見直すべし。そのためにも本を読むしかない。何を読めばいいのかというと、何でもいいから片っ端から、とのことである。

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