2008/01/09

「日本の行く道」 橋本治 (集英社新書)


今の日本の社会は何かがおかしい。しかもその外側には地球の温暖化という問題もある。日本はいったいどういう道を行けばいいのか。その問題を延々と回りくどく考えていった結果、結局日本は1960年代前半に戻ればよいという話になる。

それから明治維新・産業革命の分析をする。日本は江戸時代既に工業性手工業が完成して平和に暮らしていたので、産業革命の必要は無かったのだ。当時は開国して近代化を目指すしか無かったが、行き詰ってしまった今となっては、改めて別の選択をすればいいのである。日本は江戸時代に戻ったっていいのかも知れない。

江戸時代では極端なので60年代前半で妥協してはどうかというわけである。それで貿易戦争にはそこそこに勝つことにする。勝ちすぎると国内の農業が壊滅してしまう。日本は工業製品を作り過ぎで、農業製品は作らなさ過ぎなのだ。必要な物を必要なだけ作る経済に戻せばよい。

一番面白かったのは、著者が「60年代前半に戻す」というときの具体的なイメージだ。60年代前半には新幹線もコンピュータもあった。無かったものは超高層ビルである。だから「60年代前半に戻す」とは、今ある超高層ビルを壊すことなのである。それで減ったオフィスや住居を地方に移転すると地方が活性化する。

また、経済発展の象徴である超高層ビルを日本が壊し始めると、日本の真似をして経済発展しようとしている中国がうろたえる。そうやって中国にも地球温暖化のことなんかも真剣に考えてもらうというのだ。

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