村上春樹インタビュー集。最近のハルキさんはエッセイを書かないし、期間限定ウェブサイトもやらなくなったので、分厚いインタビュー集が読めて嬉しい。
ハルキさん曰く、人間存在は2階建ての家である。1階はみんなで集まる場所。2階は一人になるための個室や寝室。地下室は日常使わないが時々入ってぼんやりするところ。更にその下に別の地下室があるのだが、非常に特殊な扉があって分かりにくい。普通はなかなか入れないし、入らずに終わってしまう人もいる。
その地下2階に何かの拍子で入ってしまうと、そこには暗がりがある。前近代の人がフィジカルに味わっていた暗闇で、その中をめぐると普通の家の中では見られないものを人は体験する。その体験は頭で処理できない。ハルキさんはその体験を物語にしているのだという。
今世界中で村上作品が読まれているのは、近代システムの崩壊によって前近代的暗闇を体験する人が増えているからではなかろうか。
僕は村上作品では「ねじまき鳥」までが好きで、それ以降のはどうもよく分からなかったのだが、ハルキさんによると「ねじまき鳥」までで『僕』的価値観の追求は終了したとのことである。そこから先は、連帯感のような新しい価値観を創りだそうとしているらしい。そう言われると少し分かるような気がする。
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