2016/08/28

「セトウツミ」 此元和津也


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娘が友人から借りてきたマンガ。めっちゃ面白いというので読んでみたら、たしかに面白い。何度も声を出して笑ってしまった。

瀬戸と内海という男子高校生ふたりの暇つぶしの会話がほとんどだが、それがよくできた漫才のように面白い。内容も軽い言葉遊びから人生哲学的な議論まで幅広くて、 「この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか」というウツミの内心の主張にも頷ける。

この漫画の舞台設定は明示されていないが、背景に描かれている景色は大阪府堺市に実在する。あの川辺は旧市街のザビエル公園の裏にあって、歩いて行ける距離には海(=瀬戸内海)がある。川といっても実は江戸時代以前に作られた環濠の名残りで、水の流れはほとんど感じられない。そのことはハッキリ描かれているわけではないが、瀬戸と内海にとっての停滞した時間感覚を暗示しているような気がする。

背景は写真を加工したかトレースしたもののようで、実際の景色とピッタリ一致している。人物は手で描いているので、当然のことながらマンガ的で、背景とは雰囲気が違う。ポケモンGOみたいに、現実の世界にマンガのキャラクターが現れたようにも見える。

読んだ後で思い浮かんだのは、まずジャルジャルの漫才。それから村上春樹の「風の歌を聴け」。「風の歌を聴け」は大学生が暇つぶしの会話をする話で、瀬戸内海に近い川辺のバーが舞台だ。内海がときどき出してくる面白い比喩も村上春樹的だし。

ここで少し読めます → セトウツミ傑作選

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