2009/04/29

「バレエ漬け」 草刈民代 (幻冬舎文庫)


この前テレビで草刈民代さんが商店街を歩いているのを見た。背筋がビシッと伸びてとても美しい歩き方だが、足元は見事な外股である。商店街を歩くときもバレエ・ダンサーなのだ。

うちの奥さんが草刈民代さんのファンで、この本を貸してくれた。編集者がまとめた口述本かと思ったら、意外にもちゃんと自分で書いているようだ。しかも上手い。歩き方と同様にビシッと筋が通っていて、外股な感じがする。文章がこれだけ本人の雰囲気を表しているのは、なかなか稀なことだと思う。

最初に文章を書こうと思ってから20年経ったのだという。民代さんは多分、バレエ・ダンサーとして身に付けた回路を使って文章を書いている。村上春樹さんが「どんな風に書くかというのは、どんな風に生きるかというのとだいたい同じだ」といっているとおりのやり方である。実はそういう文章を書く人は非常に少ない。ちゃんと生きている人の多くは文章なんか書かないし、文章に熱心な人は生きることが疎かになりがちだ。

これくらいの一流になる人は何の迷いもなく自分の道を進んで来たのだろうと思っていたが、給料をもらうバレエ・ダンサーという仕事が存在しない日本でプロとしてバレエを続けるうえでは常に葛藤があったと書いていて驚いた。大事な舞台の前に緊張で胃が痛くなったりするとも書いていて、イチローの胃潰瘍を思い出した。

バレエの作品やダンサーの話は不案内でよくわからないが、不注意で忘れ物ばかりしていた子どもの頃のことや、周防監督との結婚の話など、いろいろ面白かった。

0 件のコメント:

コメントを投稿