2007/07/09
「ロング・グッドバイ」 レイモンド・チャンドラー
僕が愛読する村上春樹とロバート・B・パーカーがどちらもチャンドラーの影響を受けているというので、昔(20年くらい前)「長いお別れ」を読んだのだが、あまり面白くなかった記憶がある。たしか途中で挫折したような気がする。筋も全然覚えていない。新たに村上春樹訳が出たので読んでみたら、今回は面白かった。分厚い本だけど細部も面白いので苦にならない。
パーカーはチャンドラーの研究者なので、探偵フィリップ・マーロウはスペンサーの師匠みたいなものだが、スペンサーより感情的になりやすい。それは良いとして、フィリップ・マーロウはスペンサーに比べると存在感が薄い。ハードボイルド的名台詞はいろいろ吐くけど、それだけでキャラクターを成立させようとしているところにやや難があるような気がする。マーロウの一人称で書かれているが、存在感が薄いために三人称視点のように感じる。というか、三人称の客観的視点を主人公に固定したのがハードボイルドなのか。だから存在感が薄いのはわざとなのだ。
パーカーは主人公の身体感覚を重視することで存在感を出していて、村上春樹の(非リアリズム一人称小説の)主人公も同じである。そういう点ではパーカーと村上春樹はチャンドラーから同じ方向に一歩進んだのだという気がする。ミステリのパーカーはそこにとどまり、純文学の村上春樹はさらに三人称視点に戻るわけだが。
読み始めてすぐに、ある有名な小説に似ているように思えてきた。どう考えても話の骨格が似ている。読み終わると巻末に結構長い訳者あとがきが付いていて、村上春樹も同じことを言っていた。
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